【レファレンス事例①】野尻抱影の望遠鏡「ロング・トム」
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大佛次郎は、「星の文人」として有名な野尻抱影(のじり・ほうえい、1885-1977)の末弟です。
抱影については定期的にお問合せをいただきますが、とくに抱影が愛用した望遠鏡「Long Tom」に関連した内容が多いです。
「日本光学製4インチ(10cm)屈折天体望遠鏡」
こちら、以前に当館サロンで展示した「ロング・トム」です。大きいため展示機会が少ないですが、当館の宝物のひとつです!
望遠鏡の収納箱には抱影の字で箱書きがあり、1928年(昭和3)に訳したスティーヴンスンの『宝島』に因み、「ロング・トム」と命名したことが分かります。
訳書『宝島』は抱影が当時、研究社に勤務していた事情から大佛次郎の本名・野尻清彦名で改造社より出版されました。ややこしいですね…
「私の望遠鏡は口径四インチ(十インチ)に過ぎないが、これが出来てきた昭和三年当時は、これほどのものでも全国にはまだ数が少なかった。日本光学で造ってくれたもので、『一〇一』という番号も自慢の一つだった。
筒口に近い黒い帯にと銘を白く切り込んだのは、スティヴンスンの小説『宝島』の中に出る、黄銅製の海賊砲の異名を取ったので、この小説を訳したいわゆる円本が、この費用を生んでくれたのにも因る。」(野尻抱影『星三百六十五夜』より)
来年の2025年は、野尻抱影の生誕140年にあたります。当館ではテーマ展示で、野尻抱影と大佛次郎の関わりをご紹介する予定です。
もちろん「ロング・トム」も展示しますので、楽しみにお待ちくださいませ!!