大佛次郎略年譜

1897年(明30)10月9日

横浜市英町(はなぶさちょう、現在の横浜市中区英町)1丁目10番地に生まれる。本名、野尻清彦。長兄の正英(まさふさ)は、星の民俗学者として活躍した野尻抱影(1885-1977)。

1904年(明37) 7歳

横浜市太田尋常小学校に入学。1か月後、東京に転居。

1910年(明43)13歳

東京市白金尋常小学校卒業。東京府立第一中学校に入学。歴史への関心が芽生えた。

1915年(大 4)18歳

府立一中を卒業。旧制第一高等学校の仏法科に入学。スポーツに熱中する一方、文学への興味を抱く。

1917年(大 6)20歳

前年より雑誌に連載していた「一高ロマンス」が出版される。

1918年(大 7)21歳

一高を卒業。東京帝国大学法科大学政治学科に入学。

1921年(大10)24歳

原田登里(はらだとり、通称酉子)と結婚。東京帝国大学卒業。鎌倉に移り住み、鎌倉高等女学校(現在の鎌倉女学院)の教師となる。ロマン・ロランの翻訳書を出版。菅忠雄らと同人雑誌「潜在」を創刊。

1922年(大11)25歳

外務省条約局の嘱託となる。(1924年まで)

1923年(大12)26歳

長谷の大仏裏の借家で関東大震災に遭う。

1924年(大13)27歳

大佛次郎の筆名を初めて用い、講談調の読み物「隼(はやぶさ)の源次」を博文館の雑誌「ポケット」誌上にて発表。続いて鞍馬天狗の第一作「鬼面の老女」を発表、シリーズ化して続篇を連載。同年映画化される。

1926年(大15)29歳

初めての新聞連載小説「照る日くもる日」を「大阪朝日新聞」に発表。

1927年(昭 2)30歳

「少年の為の鞍馬天狗 角兵衛獅子」を「少年倶楽部」に発表。また、画期的な時代小説「赤穂浪士」を世に送る。

1929年(昭 4)32歳

鎌倉市雪ノ下の新居に移る。

1930年(昭 5)33歳

フランス第三共和政に取材したノンフィクション「ドレフュス事件」を「改造」に発表。

1931年(昭 6)34歳

現代小説「白い姉」を「東京朝日新聞」、「大阪朝日新聞」に発表。この頃より10年間、横浜のホテルニューグランドに仕事場を置いた。

1933年(昭8)36歳

横浜を舞台にした開化小説「霧笛」を「東京朝日新聞」、「大阪朝日新聞」に発表。

1935年(昭10)38歳

直木賞選考委員となる。

1940年(昭15)43歳

文藝春秋社の報道班員として日中戦争下の宜昌(ぎしょう、現在の中国湖北省宜昌市)へ。また文芸銃後運動の講師として満州、朝鮮に赴く。

1943年(昭18)46歳

10月から翌年2月まで、同盟通信社の嘱託として東南アジアの占領地視察に旅立つ。

1944年(昭19)47歳

時代小説「乞食大将」を「朝日新聞」に発表。(戦局の悪化により中断、戦後に「新太陽」「モダン日本」誌上で書き継いで1946年に完結)

1945年(昭20)48歳

敗戦直後に組閣した東久邇宮(ひがしくにのみや)内閣に招請され、参与事務嘱託となる。国民と政府との橋渡し役として将来の日本を展望した進言を行なった。(約1か月半で内閣総辞職)

1946年(昭21)49歳

苦楽社を創立し、雑誌「苦楽」を発刊。童話「スイッチョ猫」発表。

1948年(昭23)51歳

「帰郷」を発表(1950年に同作で芸術院賞受賞)、のち英訳をはじめ6か国語に翻訳出版された。

1952年(昭27)55歳

戯曲「若き日の信長」が、市川海老蔵(のちの十一世團十郎)主演、菊五郎劇団で上演される。以後、市川海老蔵を主演に想定した数多くの戯曲を書き下ろす。

1958年(昭33)61歳

随筆「ちいさい隅」の連載が「神奈川新聞」で始まる。529回にわたって15年間続き、自然や環境破壊に対する社会的提言が多くなされた。

1960年(昭35)63歳

日本芸術院会員となる。

1961年(昭36)64歳

フランスに渡り、パリ・コミューン関係の資料を収集。「パリ燃ゆ」を「朝日ジャーナル」に発表。日本文学と郷土文化の向上に貢献したとして神奈川文化賞を受賞。

1964年(昭39)67歳

多年文学界に尽くした業績により文化勲章を受章。

1965年(昭40)68歳

「パリ燃ゆ」の完結と多年にわたる文学向上の業績により朝日賞を受賞。

1967年(昭42)70歳

絶筆となる史伝「天皇の世紀」の連載が「朝日新聞」で始まる。

1969年(昭44)72歳

創作活動により菊池寛賞を受賞。「モラエス全集」の功績によりポルトガル文化勲章を受ける。

1973年(昭48)75歳

4月30日、東京の国立がんセンター病院にて死去。大佛次郎の多彩な業績を記念するために大佛次郎賞(朝日新聞社)が創設された。

1978年(昭53)

生誕の地である横浜に大佛次郎記念館が開館。

2001年(平13)

よりよい社会の創造を目指す、政治、経済、社会、文化、国際関係をめぐる独創的で優れた論考に贈られる大佛次郎論壇賞(朝日新聞社)が創設された。

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