「ポ―ル・ルヌアール没後100年 大佛次郎版画コレクション ー小さきものへのまなざし」見どころ②
テーマ展示

<後期展がはじまりました!>
前回お伝えしたように19世紀末の当時、多くの絵入り新聞に挿絵を提供していた
ポール・ルヌアール(Charles Paul Renouard 1845 – 1924)。
当館では、大佛次郎旧蔵のコレクションとして、『ドレフュス事件』(1899)をはじめ、
ポール・ルヌアールの版画約300点を収蔵しています。
今回の展覧会では、ルヌアールの集大成ともいえる版画集『動き、身振り、表情』(1907)
所収の作品を中心に、約40点を紹介しています。
6/25(火)からは、いよいよ後期展がはじまりました!
どんな作品が展示されているのか、ご紹介します。
<ロンドン、ドルリー・レーン劇場の子ども達>
中でも見どころの一つが、ロンドンに現在もある「ロイヤル・ドルリー・レーン劇場」の
舞台裏を取材した一連の版画です。ルヌアールは「人生の中でこの上なく楽しい日々だった」と回想しています。

こんな風に、子ども達は鳥の扮装をしています。
当時のドルリー・レーン劇場は、12/26に上演されるクリスマス・パントマイムの公演が呼び物となっていました。イギリスの「パントマイム」とは、無言劇ではなく、歌あり、踊りあり、お笑いありの華やかな、大スペクタクルだったようです。
小さな出演者たちは、その愛くるしさと一生懸命さで大喝采を浴び、出し物に欠かせない要素となっていました。

演目は、イギリスの伝承バラッド(歌物語)をもとにした ≪Babes in the Wood(森の中の子ども達)≫です。好評を博し、何度も再演されています。
森の中に捨てられたで子ども達に、コマドリ(ロビン)たちが葉っぱの布団をかけてあげる場面が、多くの子ども達の出番であり、宙づりあり、行進ありの最大の見せ場です!

当時の衣装デザイナー、ウィルヘルムWilhelm( William Charles Pitcher RI, 1858-1925)の回想によると、本物の鳥に似せるための様々な工夫がなされているそうです。
大人用の衣装には、試行錯誤の末、グラデーションに染めたシルクガーゼを細く裂いたものが使われました。フットライトの明かりの向こうに、幻想的な雰囲気が広がったといいます。
子ども達の小鳥の衣装には、特別なスパンコールが縫い付けられているそうですよ。
版画はモノクロの銅版画ですが、当時のエピソードを合わせ、
是非、玉虫色の「キラキラ」を想像しながらご覧ください!