ポ―ル・ルヌアール没後100年/大佛次郎版画コレクションー小さきものへのまなざし  ルヌアール展の見どころ③

テーマ展示

<新事実発見!>

はやいものです!「ポール・ルヌアール展」も残りわずかとなりました。

今日は、今回の展示で新たにわかった事実をご紹介したいと思います。

それは、展示している版画コレクションの最初の持ち主についてです。

そもそも、大佛次郎が、どんな経緯でこれらの版画を入手したのか

詳しいことは分かっていません。

<日本への紹介者>

ですが、フランス人画家・版画家であったポール・ルヌアールの作品を日本に最初に紹介した人物はわかっています。

通訳としてフランスにわたり、美術商やパリ万国博覧会の事務官長(責任者)として

日本美術のすばらしさを世界に伝えた林忠正です。

ジャポニスムに湧くパリで、多くの画家と交流を重ねた忠正は

若き画家たちの良き理解者でもありました。

同時に、日本の芸術家にも西洋美術から多くを学んでほしい、と

コレクションを日本に持ち帰りました。

その中でも、芸術家としての姿勢と一瞬を切り取る描写力を高く評価していたのが、

ポール・ルヌアールだったのです。フランスから持ち帰ったデッサンや版画199点は遺言によって

寄贈され、現在東京国立博物館に収蔵されています。

只今、大佛次郎記念館で展示中のポール・ルヌアール版画[舞台裏でのおしゃべり]

の元になったと思われるデッサンが東京国立博物館のサイトから閲覧できます。

ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

<シリアル番号:No.7>

これは、版画集の奥付にあたるページ。

シリアル番号は7を示しています。

また、大佛次郎記念館の版画がくるまっていたタトウ紙にはこんな記載がありました。

Ex:N 7 à Monsieur Nagasaki(シリアル番号:7番 ムッシュウ ナガサキへ)

、、、と読めます。

このムッシュウ・ナガサキが誰なのか、が今回明らかになりました。

それというのも、版画集の企画をルヌアールが林家に書き送った書簡と、この版画集の代金として1000フランを受け取ったという、

ルヌアールからの領収書の存在が明らかになったからです!

ムッシュウ・ナガサキとは忠正の実弟で医師の長崎千里(ながさき・せんり)であることが分かりました。

国立西洋美術館のHPでは、東京文化財研究所からの寄託をうけ、「林忠正宛書簡, 1884-1906年」の画像が検索できます。https://hayashi.nmwa.go.jp/jp/guide.html

また、木々康子編、高頭麻子編著『美術商・林忠正の軌跡 1853-1906――19世紀末パリと明治日本とに引き裂かれて』(藤原書店、2022年)では、

これらの書簡のうち、これまで未収録だった150通が翻訳され掲載されています。

多くの方々の研究成果や努力のおかげをもって、現在、大佛次郎コレクションとなっている資料の由来に一歩近づけたというわけです。

是非、記念館でしか味わえない、大佛次郎旧蔵のSPレコードの音源「ボレロ」の調べに合わせた、ルヌアール版画の全画像とともにお楽しみください!!

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