【レファレンス事例③】思い出の『霧笛』を探して
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当館では、ご利用者の皆さまからの、ご質問などのレファレンスを大歓迎しています。
日々さまざまなレファレンスをいただきますが、今年度(2023年度)に思い出深かったものを事例として紹介しています。
本日はシリーズ3回目、「思い出の『霧笛』を探して」。
ご来館のお客様より、
「戦後~昭和31年の間に、小学生だった自分が手に取った『霧笛』単行本が何か知りたい」
というレファレンスをいただきました。
☆『霧笛』とは?
『霧笛』は、大佛が得意とする、文明開化期の横浜が舞台の〈開化もの〉の代表作です。
横浜の居留地で働く青年・千代吉が抱く、主人であるクーパーが持つ強さへの憧れと屈折した思いを、
港で起こる治外法権を背景とした事件や、洋妾(らしゃめん)・お花をめぐる駆け引きとともに描いています。
初出は、1933年(昭和8)7月7日から始まった「大阪朝日新聞」と「東京朝日新聞」(夕刊)で連載(全56回)。
挿絵は、洋画家の木村荘八(きむら しょうはち)。荘八と大佛は〈開化もの〉の名コンビです。
単行本は、翌年1934年に新潮社から刊行されたものが初版で、この装幀も木村荘八。
初版以降、『霧笛』は出版社を変え、改版・改装をくり返しています。
手に取られたのはどの版だったのでしょうか。
☆どの『霧笛』か?
さっそく、お客様とスタッフで謎解きがはじまります。
スタッフ「『霧笛』は、どんな表紙だったか覚えていらっしゃいますか?」
お客様「墨で書かれた絵のイメージでした」
スタッフ「それでしたら、初版本の函(ケース)かもしれません。ちょうど展示中なので、ご覧ください」
※この時は【大佛次郎と木村荘八 ―作家と画家、そして猫】展示中。
お客様「少し大きすぎる気がします」
スタッフ「初版は別の作品(『仮面舞踏会』)が一緒に収録されているので厚みもありますね。それでは、昭和31年頃までの『霧笛』単行本をご確認ください」
☆レファレンス続行中
その後、閲覧室でピックアップした単行本を実際に見ていただきましたが、お客様のイメージに合致するものはありませんでした。
『霧笛』の展示が終了する4月以降での再来館をお約束し、その時は展示中だった初版本を手に取ってご確認いただくことに。
果たして思い出の『霧笛』は見つかるでしょうか。スタッフも興味深々です。
このように、レファレンスが続いていくこともあります。
ご質問内容によっては、お時間をいただくこともありますが、お気軽にお声がけください。
皆さまのご質問、レファレンスをお待ちしております。
レファレンス事例① 野尻抱影の望遠鏡「ロング・トム」
レファレンス事例②『ブックレット』と『おさらぎ選書』